新型コロナ対策で歯科材料費や診療時間が増加
院内感染対策によって、歯科材料費は1ヶ月で約10万円増加し、特に衛生用品は対前年度比35%となっていることが、日本歯科医師会の「院内感染対策費に関する調査報告書」により明らかになりました。診療予約時間や準備時間の増加、感染対策のために新規購入した物品の平均額が90万円となるなどの結果が報告されました。調査は都道府県歯科医師会員や日歯委員会委員、日歯役員ら284人を対象として今年2月1~25日にかけて実施され、有効回答数は183人。
今年1月の診療状況では、対前年度と比べて初診数が84,6%、再診数が93,2%といずれも減少。問診等を含めた診療時間は、予定予約枠の時間は1人平均30,7分で前年より1,9分増、受付から会計までのそう時間は40,8分で3分増、次の患者誘導までの時間は7,1分で2,8分増。「1日20人診療するとした場合、診療後の清掃等準備にこれまでと比較し1日あたり60分多くの時間を要している」と分析しています。主要処置実施件数で通常時と比べて少ないと回答したのは「抜歯」75,4%、「タービン等による形成処置」74,9%、「スケーリング等の処置」65,6%、「歯周外科手術」55,7%などとなっています。
歯科材料費の1月の平均額は57万1,125円で前年より9万2,981円と19%増加。うち衛生用品費用は10万1,388円で前年比2万6,305と35%増加。コロナ前からの歯科材料費の増加割合では、無回答が39,9%で最も多いものの、23,0%が「20~50%未満」と回答。次いで「10~20%未満」19,1%、「~10%未満」7,7%、「50%超」6,6%、「0%」3,8%となっている。うち、衛生用品費のコロナ前からの増加割合では、「20~50%未満」30,1%、「~20%」23,5%、「100%超」15,3%、「50~100%未満」9,3%、「0%」3,8%となっています。ちなみに、医療廃棄物処理にかかる費用(同1月)は平均1万1,321円で、2,503円、28%増加しました。
会見で日本歯科医師会の堀会長は、「歯科医療機関に対して標準予防策に加えてより高いレベルの感染防止策の強化を求めてきた。各医療機関に対応していただいた結果、少なくとも、昨年12月まで歯科治療を通じた感染拡大の事例報告がないという結果につながっている」と強調。「成果につながった対応の確認と課題、財政支援が必要かどうかも含めて、調査を行った」と説明しました。

歯科医師も新型コロナワクチンの接種が可能に!?
厚労省の「新型コロナウイルス感染症のワクチン接種に係る人材に関する懇談会」が4月23日、オンライン上で開かれ、条件を満たした上での歯科医師によるワクチン接種を違法と見なさない(違法性阻却)案が容認されました。集団接種で必要な医師・看護師等の確保ができない場合、必要な研修を受け、患者の同意を得ることで歯科医師の違法性が阻却されます。同懇談会では、医道審議会の医師分科会と歯科医師分科会の委員を中心に違法性の阻却について議論。歯科医師における筋肉注射が行われる例があり、歯学部教育でも基本的な内容の教育が行われている点などを鑑み、条件付きでの違法性阻却を認めるとの意見で一致しました。
必要な研修は2時間程度で、「新型コロナウイルスワクチンに関する基礎知識(副作用含む)」「接種に必要な解剖学の知識」「接種の実際(注意点)」「アナフィラキシーとその対応等」などを学びます。また、集団接種会場での予診はあくまでも医師が実施。接種後の状態観察も歯科医師が携わるが、アナフィラキシー等への対応は医師主導で行われる見込みです。なお、これまで違法性が阻却された事例としては、「新型コロナウイルス感染症に関するPCR検査のための鼻腔・咽頭拭い液の採取の歯科医師による実施」の他、「非医療従事者によるAEDの使用」や「科学災害・テロ時における非医療従事者における非医療従事者における解毒剤自動注射器の使用」「特別養護老人ホームや在宅における介護職員等による痰吸引等の実施」があります。
日本歯科医師会の柳川副会長は4月22日の会見で、集団接種会場での人材不足が起こる可能性はあるとの考えを示し、「地元の医師会や自治体から要請があれば、協力は惜しまない」と改めて歯科医師会の立場を説明。事前研修については、PCR検査の時の実績を振り返り「教材が整えば、Eシステムの準備は1週間ほどで整う」と述べていました。

定期歯科検診の受診数は歯科衛生士の数が影響?
歯科医院の歯科衛生士数や歯科衛生士専用ユニットの有無などが定期歯科検診を受診するかどうかに影響する。東京医科歯科大学大学院歯科学総合研究科の相田潤教授の研究グループが、愛知学院大学、九州大学、国立保険医療科学院、明倫短期大学、大阪歯科大学、深井保健科学研究所との共同研究で明らかにしたもの。
これまで歯科医院への定期検診受診に影響する要因は、患者個人の教育歴や収入など社会経済的要因の関連が報告されていましたが、歯科医院側の要因は十分に検討されていませんでした。研究グループは、歯科衛生士数や歯科衛生士専用ユニットの有無、歯科保健指導の時間との関連を明らかにするために、8020推進財団が2014年に実施した「歯科医療による健康増進効果に関する調査研究」のデータ、1181医院、1万2,139人の患者(治療63,0%、定期検診37,0%)について分析。
解析の結果、患者個人の年齢や性別、教育歴や経済状態を調整した上でも、「歯科衛生士専用ユニットがある」「歯科健康教育に20分以上かけている(0分と比較)」「歯科衛生士が3人以上いる(0人と比較)」で、定期検診を受けた患者の存在比率はそれぞれ1.17倍、1,25倍、2,05倍と有意に高くなりました。また、患者が定期歯科検診を多く行っている歯科医院に移ると、定期検診をするようになる確率は1.69倍と推定されています。
出展:日本歯科新聞社

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