■ 2020年の歯科診療報酬の改定に向けて

業務の効率化や合理化の観点から、歯科診療報酬明細書様式の見直しについての議論が2019年10月25日に中医協の第428回総会で行われました。厚労省からは簡素化に向けた提案がなされ、2020年度診療報酬改定に向けた個別事項として話し合われました。

①医療従事者の負担軽減や効率的な事務の推進のため、歯科診療報酬明細を算定日順に整理した様式に見直し、摘要欄への記載を簡素化できるようにする

②医療現場への影響を鑑みて、改修等への経過措置を設ける

③紙媒体での手書請求に限定して、当面の間は従来の様式でも差し支えないことにする

厚労省から提示された次期改定での対応案は上記の3点。

これらの対応案に対して、診療側委員で日本歯科医師会常任理事の林正純氏はおおむね賛成としながらも、③の当面の間という期間に対して、「約1割の歯科医療機関が紙レセプトで請求している状況もあり、現場で混乱が生じないよう影響等に配慮した期間を設けてもらいたい」と要望しました。一方で、一部の支払委員会側からは「歯科診療報酬明細書に関する摘要欄への記載の簡素化は重要で、歯科は医科や調剤に比べて電子化が遅れているため、電子化を促進させる上でも様式の見直しを推し進めてもらいたい」との指摘もあがりました。

あなたの歯科クリニックでは電子化は進んでいますか?

 


■ 12,2%の歯科医院が赤字という実態

厚労省は次期診療報酬改定に向け、第22回医療経済実態調査を2019年11月13日の中医協で公表しました。個人立と医療法人等を合わせた歯科診療所では、前年度の医業収益5403万2千円、介護収益79万9千円、支出に当たる医業・介護費用4360万1千円で、損益差額は1222万9千円。前年度比で医業収益1,2%、介護収益5,7%、医業・介護費用1,0%増となりました。

同調査は2年に1度実施されるもので、歯科診療所の調査対象は1112施設、有効回答数は625施設で回答率は前回より1ポイント減の56,2%。回答者のうち個人立の青色申告者のみは373施設。調査時期は平成30年4月から31年3月末までに終了した事業年(度)と、29年4月から30年3月末までに終了した事業年(度)の2期間で、それぞれ比較されています。

前年(度)の職種別常勤職員1人平均の年額給与等は、

<個人立の場合>勤務歯科医師の給与は568万5017円・賞与は63万8883円、歯科技工士の給与は311万8132円・賞与は31万747円。

<医療法人の場合>

院長の給与は1428万47円・賞与は1万7622円、勤務歯科医師の給与は553万9876円・賞与は10万2430円、歯科衛生士の給与は262万3518円・賞与は37万6990円、歯科技工士の給与は375万1057円・賞与は37万8631円でした。

前前年(度)と比較した伸び率では、歯科技工士が個人立で6,0%増、医療法人でも4,2%増で、歯科医師がマイナス3,0%となっています。一方、歯科大学病院の前年(度)の医業収益は18億6439万2千円、医業・介護費用は29億4662万9千円で、損益差額はマイナス10億8146万5千円でした。

 


■ 78,7%が技工料値上げと回答

日本歯科新聞社によると、歯科技工界の経済的発展を考える日本歯科技工所協会の会員75社のうち45社が回答した技工料に関するアンケートで歯科技工所の78,7%が歯科技工料を1年前後で「値上げした・値上げする予定」と回答しました。

値上げと納期に関する質問では37社が「値上げした・値上げする予定」と答え、値上げ時期は2018年9月~20年5月までとまちまちでしたが、19年4月と同11月、20年4月のところが多く、「値段を変える予定はない」は8社にとどまりました。また「納期の延長」については25社が実施していることもわかりました。

値上げや納期延長の理由については「働き方改革への対応」が最も多く、消費税増税への対応、人件費や材料費の高騰、人手不足などの回答が目立ちました。

具体的な値上げでは「全部鋳造冠(金銀パラジウム合金・保険)」は5%から25%増と幅があり、値上げ後の最も低い金額は2,100円、高い金額は2800円。「硬質レジン前装冠(金銀パラジウム合金・保険)」は7,3%増から26,2%増のところまで幅広く、金額にすると4240円から8200円までありました。

また、その他の意見としては「保険の料金に関しては法的な配慮も必要だと考える」「法律の問題があるが、技工料金の制度化が必要」「保険に関しては7割を厳守している」などの意見がありました。

出展:日本歯科新聞社

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